学園プリズン

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  恐怖の身体測定  


「で、何すんのかちゃんとわかってんだろうな?」
 鍵屋崎がいないで出来るのかよ。
 まあ、鍵屋崎が了承したぐらいだから、こいつらだけでも出来るようなことなんだろうけど。何となく信用できないんだよな……。いや、俺が悪いわけじゃなく、こいつらの日ごろの行いのせいだからな。
「心配すんなって、あ、忘れてるみたいだからいっとくけどな、俺が会長だぞ?かいちょー。キーストアは副会長。つまりは、俺の方が立場が上ってわけ。わかったか?」
「知らねえよ、んなこと。で、最初はどこ行くんだ。さっさとやらねえと朝まで帰れねえぞ!!」
「直ちゃんと真夜中の学校で朝まで一緒やなんて……ロンロン、一体いつどこでそんな萌えシチュエーションを学んできたんや!」
「はぁ?」
 ったく、レイジは役に立たねぇし。ヨンイルは訳解んねえし!この二人と一緒じゃあ、5分で終わる作業も1日かかるぞ。あ、そういえばサムライはどこ行ったんだ?
 歩いてきた廊下を振り返ってもサムライはいない。もちろん前にもいない。いつの間にいなくなったんだ…?
「なあ、レイジ。サムライは?」
「あー?そういや居ねえな。でもまあ、いつものことだからそのうちひょっこり出てくるさ」
 いいのかよそんな適当で。鍵屋崎に怒られても知らねえからな!馬鹿野郎!
「お、ついたでロンロン。ここは多目的室1で、えーっと、そやそや、体重測るところな。ちなみに、うちのガッコには多目的室っちゅー部屋が8コあるから間違えるんやないで」
 ヨンイルが開けたドアから中に入ると、長机と椅子2つのセットが20くらい並んでいる。その後ろにはエアコンが2台。ちなみに床暖房完備だ。この辺で、妙に金がある学校だと再確認させられる。
 窓は、エアコンがついているため大きく開かない作りになっていて凝ったデザインになっている。
「…待てよ。つーか、8コ?今、8コって言ったよな。8、部屋……」
 多目的室が8部屋…?そんなに多くすんならそれぞれで名前替えても足りるんじゃないか。そんなに多目的な部屋が必要なのか??無駄な所に金かけてんじゃねえよ!そんな無駄金あんなら世界の恵まれない子どもに寄付でもなんでもしとけよな!!
「まあ生徒数がやたら多いからなあ。体重測る部屋だけで3部屋作るんやからなロンロン。身体測定の準備を甘くみたらあかんで。身体測定っちゅうたら身長・体重・体脂肪・座高に、それから胸囲も測るんやで」
「胸囲?なんで胸囲なんだよ。いらねえだろそんなもん」
 胸囲って、胸の周りだよな。胸筋なんてついてないぞ。なんでそんな所ピンポイントで計る必要があるんだよ。
「正直すぎだなーロンは。そんなんじゃあヨンイルと付き合っていけないぜ。嘘に決まってるだろ。胸囲なんて測らねーよ。測るのは腕の長さとウエストだよ」
「は?な、何言ってんだよ。分かってたよそんなことぐらい。バカにすんな、レイジのくせに」
 なんだ。嘘か。びっくりした。つーか、腕の長さとウエストってのも嘘だろ!そんなん測るなんて聞いたことねえぞ!もう騙されねえ!騙されないからな!!これから準備で肉体労働するって時に、始まる前から疲れさせるんじゃねえよ。
「で、体重計やら諸々の器具は保健準備室だ。ちなみに保健室の隣にある。ロンにはちょっと重いと思うから、俺らが運んでくる。ロンはサムライと二人でこの部屋の机とかイスをあっちに片付けて、時間が余ったら掃除でもしといてくれ」
「おう」
「じゃあ行ってくるな」
「ああ」
 なんだよ。
 ちゃんと出来るんじゃねえか。
 つーか、サムライはいつくるんだよ。それまで一人で片付けてろってか?これ、無駄に立派な机が重そうに見えてしょうがない。片付けに向くような備品調達しろよ…。



 ロンが一人おとなしく机を片付けている間に、廊下を歩く二人といえば、

「なあ、レイジ。お前、ロンロンのこと本気なんやなー」
「はぁ?何だよ今更」
「いやいやいや。今までお前がしてきた数々の荒行を見てきとる俺としてはな、その自由奔放過ぎる性意識をもったお前が今更年相応なかわえー恋愛を、しかも片思いなんて言われてもそう簡単に信じられるもんやないで」
「で?今は信じてんのか」
「まあな。なんと、この歩く性犯罪が出て行き際に『行ってきますのチュー』をせえへんかったんやで。しかも、ロンロンと同じ部屋に住んどるっちゅーのにあの色気ゼロのロンロンを見てみぃ!!手も出してないんかい!あの、歩く猥褻物たる異名を持つレイジが!!こりゃあ信じる以外ないで」
「ちょっと待て。その歩く性犯罪やら、猥褻物ってのは何だ……」
「そんなん決まっとるやろ!!俺が流してきた数々のお前のあだ名やないか。お前の噂なんて流行らすほど簡単なもんはないで。どんなことでもみんなすーぐ信じるんや」
「…で、その嘘8割の噂話、ロンの耳には入ってないんだろうな?」
「待ちぃや!その発言は心外やな。真実8割はいっとる」
「それが真実だろうが嘘だろうが関係ねえんだよ!ロンと、それからキーストアにはその手の冗談が通用しないことぐらい知ってるだろうが」
「そやから楽しいんやないかい」
「お前、いつかぶっ飛ばすぞ」
「それ、知っとるでザ・タッチやろ!!なんやレイジ幽体離脱ごっこやったらいつでも付き合ったるわ!!でも、出来れば直ちゃんの上に乗っかりたいわぁ」
「俺だってお前なんかに乗っかられたくねえよ」
「レイジ……、なかなかツッコミが上手くなったやないか!いやー、ダテに常日頃突っ込んでるだけないわなあ」
「……お前には負けるよ」
「何や知らんけど、レイジに勝ったでー。直ちゃんに知らせな!!」
「何を知らせんだよ」
「何って、レイジが常日頃俺に突っ込んどることか?」
「待て、その漢字はやばいだろ」
「じゃあロンロンに突っ込みたいことやな」
「それじゃ意味ねえだろ!黙ってろって話だろうが」
「そーやったか?」
「そーだったよ」

 このような無駄で無意味なよく分からない会話に明け暮れていた。
 二人はこの後、体重計を乗せた荷運搬用カートに乗って高速で移動して多目的室に戻り、ロンにきつく怒られることになる。 

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