学園プリズン

back | next | top

  学園内トラブル処理係  

「それで、どうしてその友人を生徒会室につれてきたんだ?」
 おっと、最初の目的を忘れるところだった。
「ああ、なんかこいつ部活に入りたいらしいんだけどさ。この学校ろくな部活ないだろ?だから、生徒会に入れてやってほしいんだけど…」
「お、おねがいしますっ。あ、あの、僕、何でもします。あ、その、あ、迷惑でなかったら、で、いいですから…、あの、何でもしますからっ」
 こんなに必死なリュウホウを見たのは初めてだ。そんなに、同部屋の奴が怖いのかよ。つーか、何でもします2回言ったぞ?鍵屋崎にそんなこといったら、どんなことさせられるか……
「ふん。何でもか…」
「別にいーんじゃねーの?どうせ、常に欠員いんだからさあ」
「そやそや。ちょうどこんな従順な雑用係欲しい思っとったし」
 二人の賛成意見に、鍵屋崎がうなずき眼鏡のフレームを押し上げる。そして、ふと思い出したように奥の方で茶をすすっているサムライに声をかけた。
「サムライは、どう思う?」
「異論はない」
 それだけかよ!!リュウホウがまじめな顔して汗をかきながら、神に祈るように手を合わせて様子を見守っている。そこまでして、こんなとこ入りてえのかよ…、こいつがわかんねぇ。
「そうだな。僕もいつもいつも働かない生徒会長の代わりにあちこち歩き回るのにうんざりしていた所だ。リュウホウ、お前を庶務兼雑用係として生徒会入会を許可する」
 しょむけん雑用係…要するに、まあ、雑用係だよな。
「ありがとうございますっっ!!」
 リュウホウは飛び上がって喜び、それから我に返ったように顔を赤くして小さな声ですいません…とつぶやいた。
「よかったな」
 とりあえず、上手くいったということにしておこう。
「うん。本当にありがとう。あ、えと、ロ、ロ、ロンのおかげだよ」
 まだ呼び捨てが慣れないのか、何度もどもりながら俺の名を口にする。俺がなんかしたわけでもないのに、そこまで嬉しがられると結構いい気分だ。俺の名前を呼び捨てにした瞬間に、レイジが強い視線をリュウホウに向けたことには気がつかなかったことにしよう。
「さて、と。新メンバーも加わったことだし、ここで古株の自己紹介でもすっか。俺は生徒会長のレイジ、よろしくなリュウホウ」
 レイジが流れるような動作で差し出した右手に、リュウホウはおそるおそる自分の手をちょこんと添えた。
「あ、あ、あ、よ、よ、よ、よろ、」
 言えてねえし。
「んで、この眼鏡が副生徒会長の鍵矢崎。ロンのお隣さんな」
 なれなれしく肩に置かれたレイジの手を、嫌な顔して払った鍵屋崎は、握手の手を差し伸べもしない。
「何でもすると言ったからには実行して貰うからな」
「はいっ」
 ……それって、挨拶になってるのか?
「で、この常に漫画読んでるオタクがヨンイル。役柄はー、何だっけ」
「議長や、議長。数少ないレギュラーメンバー忘れるんやないで。漫画のことなら俺に聞き、はい、握手。よしよし、リュウホウよろしゅうな」
 強引に手を握られたリュウホウは赤を通り越して、具合が悪いような顔色になっている。緊張しすぎだろ、てか、こんなんでやってけんのかよ。こいつ。
「で、そこのでかいくて無口な奴がサムライ」
「会計を担当している」
「一礼すんな!!リュウホウがビビるだろ!」
 あ、しまった。ここは黙っていようと思ったのに、ついツッコミを入れちまった。
「ロンロンは流石やなあ!やっぱこのまとまりがない面々には一人ぐらいツンデレツッコミキャラが必要やで」
 なんだそのツンデレツッコミキャラってのは、もうぜってーしゃべんねーからな。
「うわっ」
 口に手を当てた俺を、突然背中から抱きしめてレイジはにやにや笑った。その、嬉しそうな顔はなんだ!!いっつもいっつもにこにこ笑いやがって、腰に手をかけんな!!
「で、ロンが書記な。字、汚えけど」
「うるせえよ!書記にしたのはてめえだろうが!!」
「っ、ふ、ふふふっ」
 ……笑った。リュウホウが声上げて笑った。この、控えめでちょっとウザくて気ぃ使いのリュウホウが。
「笑ってたほうが可愛いやないか」
「…まあ、いつものおどおどした顔よりはマシだな」
「同感だ」
 こいつら…何だよ。あーもう、どっちなんだよ。馬鹿野郎。これだから嫌いになれねーんじゃねえか!!
back | next | top

-Powered by HTML DWARF-

inserted by FC2 system