プリズン家族モノ

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  仲良し兄弟  

「ヨンイルー、何かおもしろい漫画ないか?」
 うちの末っ子ロンが、珍しく俺の部屋におる。家族団らんの時とか飯の時にみんなで話すのはよくあるけども、俺とロン二人だけっていうのは、そんなに多くない。
「何が読みたいんや。今のオススメはこれやな。なんとも珍しいワイン漫画、神の雫。あー、でもロンロンには向かんかもな。ちょっとこう、専門用語がな」
 予想通りむっとするロンロン。まったくもう、かあえーなあ、うちの末っ子は。レイジが猫可愛がりすんのもわからんでもない。
「馬鹿にすんな。そんぐらい読めるよ。あー…でも、何か他のやつにしてくれ。アクション系」
「アクション系て、また範囲がごっつ広いやないか。んー、アクション。お、これはどや?学園モノと思いきやバトル中心。現在意味わからん過去話中の…いや、こっちも捨てがたい。これ、アクションて戦いだけやないんやで。カレー料理対決。これも立派なアクションやろ」
 普段ジャンプぐらいしか読まないロンロンに、この機会にぶあっと大人向け漫画を読ませるってのもおもしろそうやな。でも、母さん怒るやろな…このまえレイジがロンロンに18禁なビデオ見せようとしたときも…
「普通のメジャーなやつないのかよ」
「む、俺の部屋にメジャーどころがそろってないわけないやろ。そやな、これはどや、最初は多重人格ものかなーと思わしといいて、実はそうでもなし。最後に悩むんやで、本当のモンスターは誰て。人の心にはみんな鬼が住んでるんやでロンロン」
「それ、なんか混じってるだろ」
 鋭いやないか。よく最後が夢枕だと気づけたもんやで、これは表彰もんや。
「じゃあ、これなんてどや。ロンロンの大好きなジャンプのやつや。ちょーっと昔のになるけどな。これも立派なジャンプ作品やで」
 俺がせっかく気前よく差し出した漫画に、ロンロンは怪訝な顔して眉間にシワを寄せとる。やっぱし年齢があれやなぁ、今時の子にこのおもしろさは理解できへんかもしれん。
「なんだこの顔」
「仮面にきまっとるやろ。何枚剥いでも生身には辿りつけんのや」
「ふーん。じゃあ、借りてく」
 ふふん、満足したみたいやな。
「おう。あ、続編もあんねんけど、全部貸そか」
「んー、最初のだけでいいや。読んだら続き借りに来るから」
「んじゃ、これだけな」
「結構あるじゃねえか」
「何言うてんのやロンロン。こんなん一日二日しかもたへんぞ」
「お前だけな」
 棚からすっぽり抜けたスペースに、その辺に積み重ねられとる漫画を詰める。よし、ぴったりや。
「ロンロン、そんなに抱えて転ばんようにしいや」
「分かってる」
「漫画に傷つつけるんやないで」
「漫画の心配かよ」
 そんなわけないやろ。まあでも、そう思っとくぐらいが丁度ええ。兄弟なんてそんなもんや。レイジは別やけどな。
「読み終わったらプロレスごっこしよな」
「気が向いたらな」
 猫っ子ロンロン。やっぱ弟は可愛いもんやで。それ読み終わったら覚悟しときや、ロンロンにヨンイルバスターをお見舞いしたる!!
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